| 山頂を厚い雲が覆い、時折冷たい風が背中をたたく。突然、立ち込めた霧が吹き飛び、眼下に青緑色の水をたたえた湖「天池」が神秘的な姿を現した。
中国東北部と北朝鮮の国境にそびえる長白山脈の主峰、長白山(標高2744メートル)。北朝鮮では「白頭山」と呼ばれ、古代から地元民が神聖視してきたこの山を訪ねた。
天池の標高は2194メートル。世界一高い場所にあるカルデラ湖で「長白天池」の別名を持つ。南北約4・6キロ、東西約3・6キロで、湖面中央が北朝鮮との国境線だ。天池は、鴨緑江、豆満江、黒竜江の支流・松花江の源流でもある。
「これまで3回来ましたが、濃い霧で何も見えませんでした。初めて池を見られました」。同行した愛知県小牧市の貿易業、下野麻那さん(47)が語った。
一年の大部分を雪に覆われる長白山は、夏のわずかな時期に観光客でにぎわう。ふもとから山頂下の天文峰駐車場まで約10キロ、急こう配の石畳の道を四輪駆動車が観光客をピストン輸送する。近年は韓国からの観光客も多い。駐車場の売店の看板には中国語とハングル文字が書かれていた。近くにある落差68メートルの大滝「長白瀑布(ばくふ)」では、滝を背景に民族衣装チマ・チョゴリで盛装した女性たちが記念撮影をしていた。
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日本が中国との国交を回復した1972年当時、「中国は日本より50年遅れている」といわれた。それが今では、長白山脈のふもとの広大なトウモロコシ畑にも、石油採掘機がいたるところに設置されている。「地元の人はあと20年で日本に追いつくと言っています」。長年、中国と日本を行き来し繊維輸入に携わった三重県菰野町の前田武雄さん(65)も、その急激な変化に驚いていた。
【写真・文 小林理幸】
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