03/04/17
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14 市に並ぶ工業製品
 
グローバル化、確実に浸透
週に一回の市
週に一回の市でにぎわうボッソウ村。食料、衣類などさまざまな品物がそろう


村の片隅で井戸端会議
村の片隅で井戸端会議が始まる。しゃく熱の太陽を避ける木陰は、社交場になる

泥を成型して天日に干して作るれんが
建設中の丸い家(奥)と泥を成型して天日に干して作るれんが
 
酒は付けで

 ボッソウ村の中心の広場に100軒近い屋台が立ち並んでいた。今日は水曜日。「市(いち)」の立つ日だ。市の立つ日は近隣の村ごとに違う。ワゴン 車が何台もやって来る。村々を巡回する商売人たちだ。悪路で車体が傾くたび、屋根の上に山積みの荷物や人がこぼれ落ちそうになる。

 日曜日も関係なく働く村人たち。だが、この日は朝からお祭りムードだ。夜には発電器の照明で野外ディスコも開かれる。私たちの昨晩の食事を片付けに来たニョンコさん(55)は、朝から極彩色のワンピースにイヤリングで着飾っている。「夜が楽しみ」と踊る仕草で帰っていった。 私たちもチンパンジー観察は休み、市に行ってみよう。
 主食のコメやマニオクというイモ、アブラヤシの実。バナナやパパイア、トマト、オクラ、トウガラシなどの食べ物は地元産だろう。村人たちが売っている。

 イワシのような干物は1000キロ離れた大西洋産。せっけんやサンダル、鍋や洗面器、衣類など工業製品の多くは、隣国コートジボワールなどの外 国製だ。電池など中国製も多い。

 日用品はたいていそろう。だが、村人たちの多くは眺めるばかりで買う様子がない。たいした現金収入がないのだ。市で30〜40センチの巨大パパ イア1個を売って12円、バナナ1本で1円以下の収入だ。畑仕事の日当でも90円ほど。

 だから、約30円のジュース1本、たばこ1箱でさえ高い。男たちは、森で採った「コーラ」という渋い実をかんでし好品にし、ヤシの樹液を発酵させた 「白ワイン」という名のどぶろくを木陰で飲む。5リットル60円の安酒だが、金の受け渡しがないから「付け払い」のようだ。


貯蔵せず

 親指の先ほどの小袋を並べた屋台があった。塩などの調味料という。なんと1回分、1週間分のばら売りなのだ。まとめて買えば安いのに。

 ギニアのバナナは、独自の品種らしくおいしい。まとめ買いして少しずつ食べていたら、すぐ腐ってしまった。――そうか。気温がほぼ一定のこの地 では年中、食べ切れないほど果物が採れる。貯蔵しないことが衛生を保つ知恵なんだ。「蓄えは美」ではないのだ。

 食うに困らない環境は、村人の表情を穏やかにする。たまにネズミの肉や魚が混じる野菜シチューとコメかマニオク。これを1日2食というのが村の 平均的な食事だ。太った人はいない。どの家にも最少限の衣服や食器しかない。

 しかし、こんな村の生活も変わりつつある。杉山幸丸・元京都大霊長類研究所長(67)が初めて訪れた76年当時、ひょうたんなど天然素材だった食 器は、今ではプラスチックや金属製が大半。13平方メートルほどしかない小さなカヤぶきの「丸家」ばかりだったのも、今では土と家畜のふんを練り 固めた日干しれんがの大きな家がほとんどだ。1枚400円以上する高価なトタン板でふいた家も目立つ。

 数人の男が、ことさらにラジオを耳に当てて歩き回っていた。ラジオを聞き、政治を談じることがステータス・シンボルらしい。

 最近はバーも何軒かできた。電気は通じていないが、冷蔵庫からビールを出してくる。室内にはW杯などを特集した写真新聞が張ってあった。新聞 のない村では重要な情報源だ。月に何度か、首都のテレビを録画したサッカー中継などのビデオ上映会もある。「私だけ日本戦の結果を知らず、恥 をかいた」と京都大大学院生の大橋岳さん(27)。

 この村も、グローバル化する世界に確実に組み込まれつつあった。

南北格差

 ギニア国民が富士山のように慕う国境の山、ニンバ山。ふもとのセリンバラ村は50戸ほどの小村で、ほとんど昔ながらの丸家だ。市は立たず、店も ないので現金の出番はほとんどない。

 そこから郡都ボッソウ、州都ヌゼレコレへと行く道筋では、商いが発展し、社会がより複雑になっていく過程が一望できる。まるで生きた経済史の教 科書だ。

 ボッソウの7日分の賃金が、首都では1時間のタクシー代。ギニアは、国民の平均年収が約5万円という最貧国だが、国の中でも「南北格差」は広 がっていた。

 伝統的な村の祭りを再現してもらった。隣村の楽人が、小太鼓「タムタム」をたたきながら地元の言葉で歌い、村人たちが踊る。素朴な太鼓の音色 がその場を柔らかく包む。リズミカルなダンスに圧倒される。さすがアフリカ。

 この村を中心に、わずか1万人ほどと言われる少数民族マノンの歌は、市販のカセットテープにはほとんど登場しない。若者たちは「村祭り」を好ま ず、首都などで流行の曲を大音響で流すディスコへ行ってしまった。里山に響くスピーカーの音を、チンパンジーはどんな顔で聞いているのだろう か。
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つづく

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