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03/03/06
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![]() 村のカカオ畑にはチンパンジーに食い荒らされた残がい ![]() チンパンジーの森には、開墾者が伐採を試みた木が倒れていた ![]() 畑荒らしをするチンパンジーを間近で観察するガイド。村人から冷たい視線を投げかけられることも...... |
「これを見なよ! いったい、どうしてくれるんだい!」。ある朝、森へ向かってボッソウの集落を行く私たちに、村の女性が険しい表情で声をかけた。手に持つパイナップルは、付け根から先の実がない。「あんたたちのキエ(現地語でチンパンジー)が食べたんだよ」 チンパンジーによる田畑荒らしの被害は少なくない。イモの一種、マニオクを掘り返して食べる。収穫間際のイネを引き抜いて、根元の茎をかじる。チンパンジーが通った水田は、踏み倒された稲穂が痛々しい。現地に滞在中、私も何度か目撃した。 「我々だって食べ物に困る時はあるだろう? 困った時はお互い様さ」と村の運転手、レロイさん(36)。チンパンジーに対して寛大な村人たちも多い。だが、現金収入に結び付く作物や主食のコメを荒らされることへの怒りが、近年になって強まっていることも確かだ。00年のリベリア内乱など隣国の政情不安から、ギニアに多くの難民が流入、国境近くのボッソウ村の人口が急増したことが背景にあるという。 国境といっても、かつて欧州列強が地図の上で勝手に引いた線。同じ民族が国境の両側に暮らしているから、みんなパスポートも持たず、歩いて日帰りで行き来する。チンパンジーによる作物荒らしが不満でも、以前なら「彼らは我々の先祖の化身。ご先祖様が味見に来ないような畑こそ問題」という長老の意見で、ともかくは収まった。人の移動が増えた今、そうした「しきたり」を保つのは、難しくなりつつある。 「困った時はお互い様」で、「森はみんなのもの」が伝統。だから、チンパンジーの森と言えど伐採し、焼き畑にしてしまう人が後を絶たないのだ。 ボッソウの森は91年、ユネスコの重点保護地域に指定されるなど、国際的関心が高まっている。ギニア政府も保全に強力な姿勢で臨むようになった。 昨夏には研究施設に近い村外れの森を開墾した村人が収監されたという。こうした「厳罰主義」は、開墾者の反感を呼ぶ。反感の向かう先は「チンパンジーの味方」と見られがちな研究者や地元ガイドたちだ。 昨年2月、また森の木が切られた。ガイドの注意に開墾者は従わず、村の問題になった。その約1カ月後のある日、バンの森に入るすべての道に小麦粉のような白い粉がまかれていた。「呪いの薬」という。ガイドらへの嫌がらせだった。「『これをまたぐと悪いことが起こる』と、ガイドたちは森に入るのを 拒んだ」と、当時観察中だった京都大大学院生、藤田志歩さん(30)。研究は一時ストップした。 ハリウッド映画「愛は霧のかなたに」。女優シガニー・ウィーバーが演じた米国人女性研究者、ダイアン・フォッシーさんは、野生マウンテンゴリラの観察と保護に尽くした。ダイアンさんは85年、東アフリカ・ルワンダの森の中で虐殺された。何者の犯行か、真相は明らかではないが、背景はボッソウに通じるものがあるという。 「保護しても、我々には何の恩恵もない」。村の開墾者の言い分には、家族を養うことに必死の現実や、保護活動で現金収入を得るガイドたちへのやっかみもあるのだろう。日本人や欧米人にとって当たり前の「自然保護」も、地域の実状を無視すれば、「貧しいアフリカを現状に押しとどめようとする新たな帝国主義」と映る。現地の若者にそう言われた。 厳罰主義ではなく、すべての村人がチンパンジーの保護で利益を得る方法はないか......。研究者とガイドらは、新たな国際協力のアイデアを求められていた。 こんなことがあった。村の女性が乳児を家の中で寝かせ、30分ほど近くの畑へ出かけた。帰宅すると、部屋の中でチンパンジーが我が子を抱いていた。女性は恐怖で立ちすくんだ。チンパンジーは乳児をそっと床に置くと、そのまま森へ消えた――。これといった出来事のない静かな村では衝撃的な事件だった。 私たちの帰国後の今年1月、「さらに悪いことが起きた」と、現地で観察を続ける京都大大学院生の大橋岳さん(26)から松沢哲郎教授(52)に、緊急の電子メールが届いた。オスのチンパンジーがイネを荒らし始め、観察していたガイドが、水田の持ち主にビデオカメラを奪われた。持ち主は、チンパンジーを石で追った上、「マシェッド」という長さ50センチほどの大カマでガイドを脅し、「今度見つけたら猟銃で撃つ」と激高したという。 事態は深刻だ。 |
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つづく
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