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03/02/13
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![]() 小さな体をいっぱいに使い、木の実を食べてまわるちびっ子のフォーカイエ
モーベーの実 ![]() ソナンの実
ボンレの実 ![]() チンパンジーはアブラヤシの葉の付け根をかじる。その様を若いガイドのボニファスがまねた |
チンパンジーがあんなにうまそうに食べるのなら、ヒトにも食べられないはずはない――。森を歩く道すがら、地元ガイドにチンパンジーの食べる植物を尋ね、片っ端から口に入れてみた。 11歳のオス「ヨロ」が、樹上高く、直径約4センチの「ソナン」の実をひたすら食べていた。好物らしい。彼が地面に落とした実を拾った。まずは「おこぼれ」にあずかろう。皮は薄く、軟らかい実の中は大きな種ばかりだが、種の周りの果肉がブワブワした食感で甘酸っぱい。「これがチンパンジーの味覚か」。感慨深い。現地取材のだいご味だ。 観察の時、尻に敷いた「サー」という草は、牛乳の三角パックを小さくしたような形の赤い実を地表で実らせる。くずもちのような半透明の層が真っ黒な種を覆っている。何十分なめ続けても甘い。実はタウマチンという甘味料の原料だという。 「ロロ」は2、3ミリの小さな実。リンゴの皮のような味がして甘い清涼剤のようだ。筆柿のような色と形の「モーベー」の実は、すっぱい味が病みつきになる。 「トゥン」というアブラヤシの葉は、引き抜いて根元をかむ。味はないが、セロリのような歯ごたえで、水気も多い。オクラは、チンパンジーは実のほか、葉も花も食べる。村人も実をシチューにして食べる。 ブドウのように房となった「ボンレ」。ガイドが「うまいぞ」と勧めるので種ごとかんでみた。――ううっ。実に苦い。前夜、村人から出されたシチューの味を思い出した。そう。ここの村人たちは苦い料理が大好きなのだ。 メモ帳は、植物の現地名でたちまちいっぱいになった。 驚いたのは、今回初めてガイドを務めるフェリックス君(23)でさえ、実に多くの草木を識別できることだった。 ボッソウのチンパンジーの食べ物は6〜7割がイチジクやアブラヤシをはじめとする果実。他には葉や樹皮など。隣国のコートジボワールのチンパンジーは他のサルを食べるが、ボッソウでは肉食はまれ。少ないが昆虫も食べる。チンパンジーが車座になって、アリ塚のアリをかまれないよう用心しながら回し食いしている様子を見た、なんて村人の話もある。 杉山幸丸・元京大霊長類研究所長(67)らの研究では、果実128種、葉44種など計200種もの植物を食べることが分かった。一方、村人は76種を食用に、81種を薬に使う。チンパンジーに学んで食べるようになった植物も、きっと多いのだろう。 現地では平均気温は一年中ほぼ一定しており、村ではバナナもパパイアも、いつでももぎたてが味わえる。しかし、森の中では雨期半ばの6〜7月や乾期に移る11月、果実はぐんと減る。 好物がなければ、あるものを食べてしのぐか、探しに行けばいい。それはヒトの考え方だ。霊長研スタッフの竹元博幸さん(37)はチンパンジーの1日の時間配分を分析した。普段なら起きている時間の30〜35%は食べることに費やすのだが、果実の少ない時期は、食事時間が半減し、移動距離も大幅に減っていることが分かった。朝遅くまで寝床(ネスト)の中でダラダラし、動くと腹が減るからじっとしているのだ。 約6平方キロの広い森林の中、チンパンジーたちは膨大な種類の草木の位置を記憶し、「この木は新芽を」「あの草は髄を」と、時期に合わせて無駄なく動いて食べている。こうした恐るべき能力を身に着ける教育とは、どんなものなんだろう。好き嫌いはないのだろうか。 日本モンキーセンター(愛知県犬山市)では97年、遊具しかなかったチンパンジーの運動場に数十種の木を植樹した。すると、季節に合わせて草木を食べる行動が戻り、ぼけたように座り込むなどの異常行動が減ったという。 生きるものにとって、食べるという行為に費やす時間と知恵は欠かせないものなのだ。電気もガスもない村の生活やチンパンジーの姿を見ながら、単調な軽食をかき込む日本での暮らしを振り返った。 |
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つづく
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